夫婦共働きが増え、育児の余裕が減っている現代は、子どもの数が少なくなっている少子化の時代です。ここに、高齢者が多い高齢化もあわさって、現代日本は少子高齢化の状態にあると言われています。
そんな中、子育てに対するサポートが重視されており、幅広い業務を行う児童養護施設では様々な資格を持った職員が求められています。
少子高齢化による問題
少子高齢化の問題は、本来、高齢者を支える若者が少ないことで、様々な弊害が生じている点にあります。
例えば、年金問題や介護問題。若者が少ないことから、年金や介護に関する支援を受けられる年齢が徐々に引き上げられています。支援の内容にも変化が表れており、今の若い世代の人達などは、将来年金がもらえないと危惧されるほどです。
また、国内の経済が衰退していくことも問題です。商品やサービスを受ける人が減少するため、国内の企業は規模を縮小したり、海外に進出したりといった対策をしなければいけません。結果、日本の産業は後退し続け、国民の生活をサポートしきれない貧しい国になってしまいます。
このような問題を解決するためにも、日本は子育て支援に力を入れ、各家庭に出産を促しています。子どもを産み、育てることは、日本の人口増加に寄与するだけではありません。今後、高齢者になる現代の若者や中年世代の未来を支えることができるようになるのです。
子育てに対するサポートが求められている
出生数の向上を望むならば、日本の子育てに対するサポートをさらに充実させることが課題と考えられます。
保育士の待遇を改善し、人材を確保するのがその一例です。また、国民がある程度豊かな生活を送れることも、出生数向上を目指す上では必須です。生活に余裕がなければ、子育てをする余裕も持つことができないからです。余裕のない育児は、子どもの不幸を招きます。
テレビやネットニュースで取り上げられる児童虐待や育児放棄。事情は様々あれど、大人に余裕がないことは原因の一端と言えるでしょう。
「子どもは大人の助けがなければ生きていけない」とはよく言います。にもかかわらず、1番身近な大人である両親が子どもに暴力をふるう、または生きていく上で必要な手助けを放棄するネグレクトは、悲しいことに多く起こっています。
子どもを手助けする「児童養護施設」
事情があって保護者の元で生活できない子どもが入所する施設に、「児童養護施設」があります。
平成27年に厚生労働省によって発表された「入所児童等調査結果」によると、こちらの施設に入所している子どものうち、全体の37.9%は両親による虐待・放任が理由で入所したという事実が分かっています。
両親に大切に育てられた方ほど、両親による虐待・放任が原因で養護施設に入所している子どもがこれだけいるのだと驚くのではないでしょうか。
児童養護施設の役割
児童養護施設の役割は大きく2つに分けられます。
1つは心に傷を負った子どもの生活環境を整え、普通の生活が送れるように手助けすることです。子どもに対する保育・教育を実施することが、子どもが日常生活に戻るための手助けになります。
もう1つは、いずれ子ども達が自立して社会に出ることができるように手助けすることです。子どもに対する進学・就職支援を実施することが、子ども達が将来自立して生きるための手助けになります。
児童養護施設での需要が高い資格
このように、児童養護施設では保育から就職支援まで、子どもに対して幅広い支援を実施します。そのため、児童養護施設では、様々な資格を持った職員が求められています。児童養護施設からの需要が高い資格で代表的なものは、以下の通りです。
・保育士
・社会福祉士
・心理療法士
・看護士
・管理栄養士
このうち、社会福祉士を例に挙げて、より詳しく児童養護施設で対応する業務の内容を見てみましょう。
社会福祉士として児童養護施設で働く場合、子どもの家庭環境や親子関係の支援を行う家庭支援専門相談員としての業務に従事することになります。子どもやその家族の心をケアする重要な役割です。
児童養護施設での業務に従事することで、児童指導員資格の取得が可能になるので、いずれは子どもの生活や自立をサポートする児童指導員として働く道も選べます。
社会福祉士の資格は、4年制大学や専門学校、東京通信大学をはじめとした通信大学で指定科目を履修して卒業するほか、実務経験を積んだ上で養成施設などに通って指定科目を履修することで、資格試験を受験することができるようになります。
社会福祉士を目指すのが学生の方の場合は、大学と専門学校どちらに進学すべきかで悩むと思います。どちらもそれぞれの魅力がありますが、教養科目を含めた幅広い分野を学びたい方は大学、職業に直結した学びを得たい方は専門学校がおすすめです。
また、社会人の方は、仕事や育児に取り組みながら資格取得を目指す場合、通信大学がおすすめです。年数回スクーリングする必要はありますが、基本的にはいつでもどこでも授業を受けられます。仕事や育児と両立しやすい学び方だと言えるでしょう。
「福祉のエキスパート」と言われる国家資格で、難易度の高い試験ですが、取得していることで仕事の幅が広がることでしょう。
資格なしでも児童養護施設で働ける
ご紹介した社会福祉士などの資格を持たなくても、児童養護施設で働くことはできます。施設の中には、非正規職員(アルバイト)として保育補助・調理補助の求人を募集していることがあります。
また、事務員や用務員の募集も、資格の有無を問われないケースが多いです。
施設によってはボランティアの募集も行っています。地域・社会との接触が少なくなりがちな児童養護施設の子ども達が、地域・社会と関わるための機会を作る役割を担います。
ボランティアとして従事したい場合は、施設のホームページを検索すると良いでしょう。
児童養護施設で働くということは、成長途上の子どもと触れ合う機会が多いということです。「子どもは親の背中を見て育つ」と言いますが、子どもの未来を決定する一因となるのは両親に限らず、周囲の大人も同様です。
児童養護施設で働く方は、自らの行動が子どもの将来を左右するかもしれないと考え、責任を持って仕事をしなければなりません。きちんと施設の役割を理解して、子ども達に対する正しい支援を行いましょう。